第01話-3

ところでロディ達は目的地までどのように向かうつもりなのだろうか?

実はブレードバッシャーだけでなく、この宇宙を航行するほぼ全ての艦船にはとある仕組み・・装置の存在が重要である

惑星から惑星、たとえばとなりの星系に出かけるという用にしても、普通に進んでいて到着できるほど単純な距離ではない

最新鋭のエンジンと推進装置を持ってしても、一ヶ月から長い時は一年近くかかってしまう


それではどうするか?

答えはSF宇宙モノにおける最強の手段「ワープ」である

この世界の場合は空間に特殊なレンズで干渉する事により、亜空間に穴を開けて突入、時間軸の違う特殊な空間を通りその時間差を利用して数ヶ月の距離も数分まで縮める事が可能・・


・・ほんっとーに平たく言うと、「ここから目的地近くまでワープ」で済んでしまうのだが。


ちなみにブレードバッシャーの場合はブリッジの真下、最下層の部分にそのレンズが存在している


「ワーム・ドライブスタンバイ」


ワーム・ドライブ・・

つまりは先ほど説明したワープの正式名称である(漢字で書くなら「亜空間・航法」)

亜空間(ワームスペース)に対して虫食い穴(ワームホール)を開く事からこの名がついたと言われている

急ぎ用であるロディ達がこの手段を使わないわけにはいかない

目的地は遙か彼方、通常の航行で2ヶ月少しかかる・・


「空間干渉レンズ始動」


セラのオペレート、そしてシュウの操作で、ブレードバッシャー最下層のレンズが静かに前へスライドした


「回転速度上昇・・臨界点確認」

「カウントスタート、5.42秒後にドライブスタート・・・4・3・2・1・・・・」


レンズは電磁場を発生させながら高速回転を続け・・だんだんと周りにその磁場が帯を放っていく

電磁場は静かに航行するブレードバッシャーの目の前に黒い「空間のひずみ」をつくりだした

・・艦の推進が全ての出力を上げる


そして・・艦はそのまま「ひずみ」に突入し・・・この宇宙からしばらく消滅する


・・ドライブ中は外の様子が何も見えない

空間の「流れ」とでも言うべき川のような赤い流れが、ひたすら延々と横切っていくだけ・・・

ま、少なくとも何度も見て楽しい光景ではない


「ドライブアウトまで530秒」

「クライアントが帰ってないといいんだが・・」

「そりゃ壊し屋呼ばわりで時間にルーズじゃ、呆れて帰っちゃいますよ。」

「うっせーな、今すぐ殴りに行ってやろうか!?」


自業自得・・自分が寝坊したのが悪いとはいえ、滅茶苦茶いらだっているロディ

ネスはモニターに映るロディの後ろ姿に、とてつもない殺気を感じて息をのんだ


・・本気だ、この人は本気で殴りに来る・・


むしろ破壊されかねないので、彼はそれ以上の軽口をやめる


「・・ま、ドライブ中くらいは静かにしてるしかねぇよな・・ソリティアでもやってるか。」


ロディのシートについている少々大きめのモニターに、見慣れたゲームの画面が現れる

トランプを並べて順番通りにそろえるだけ、でも出来ないとなんだか悔しいあのゲーム・・


「まずはダイヤから・・」


※中略しまーす。


「・・・・・」


何分かしたころ、彼の前にはすっかり手詰まりとなった手札があった

お約束のように・・(笑)

「だぁーっ!!やってられっかぁぁぁぁぁっ!!!!!」

「ドライブアウト5秒前・・4・3・2・1・・・・」


吼えるロディをよそに、シュウはワームドライブの終了をカウントし始める

そして、ゼロになると同時に再び真っ暗な空間へと抜ける・・


どっごぉぉぉ・・・ん


「何だァ!?」

「ふえぇぇぇぇ!?なになになにっ!?」

「暗礁空域(デプリ・ベルト)ですね・・なに、いつもの通りで・・・」


シュウが言ういつもの通りとは、その岩塊の浮かぶ空間に、比較的小さなものばかりの状態を言う

だが・・


「緊急警報!!」

「なんだ、セラ!?」

「前方より「大型岩塊」接近・・直径40キロ!!!」

「なぁにぃぃぃぃぃぃっ!?」

「そんな!?近くで惑星が崩壊でもしないかぎりそんな大きなものが流れてくるわけ・・」

「崩壊したんでしょうね、大方。・・はっはっは・・」

「笑うなーッ!!」

「了解しました。」


ロディが突っ込むと、シュウはぴた、と笑うのをやめる


「急げ!戦闘態勢に移行、とにかくあのでけぇ石ッコロをぶっ壊す!!」

「うん・・急いで、シードちゃん!!」

「了解や、嬢はん!!」


セラにせかされるようにしてシードは目の前のコントロールパネルを起動する


「なんとかなりそうか、シュウ、ネス?」

「エンジンは問題ないです!」

「計算の上では・・岩塊を撃ち抜く事は可能です。」


シュウが言う間にもブレードバッシャーの船体は変形を始め、左右のブレード部から数々の武装が現れる


「じゃぁ行くぜ!・・・・乗るかそるかの一本勝負ッ!!」


ブレードバッシャーの左右から、四機の遠隔誘導ビットが現れる

ビットはその船体を十字に囲むような形で静止する

続いて・・船体にバリアの役目を果たす「プラズマフィールド」が展開された


フィールドはビットに接触すると、大きく四つの翼を広げたように収束されていく・・


「行くぜ!ワーム・マイン・・発射ぁぁぁぁ!!!!」


ブレードバッシャーから放たれた光は、目映く輝きながら岩塊へ飛んでいった・・


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